2015/06/21

【鍼灸との出会い】大学編2 卒業研究


実は大学時代の研究室の教授は、私が初めて出会った鍼灸師の資格を持つ方でした!

アメリカの大学にいらした頃に、テニスで足を傷めた際に、針を受けて、効果があったので、興味を持ち、帰国後大学で研究活動をする傍ら夜間に鍼灸の専門学校に通って資格を取得したと聞いています。

そのつながりで鍼灸師の専門学校の教員養成課程でも授業をお持ちで、そこの学生さんの卒業研究の指導もされていました。

あまり連呼する情けなくなってきますが、出来が悪い上に、当時は就職氷河期、ともかく4年生前半の就職活動が重要でしたので、いただいた研究テーマを遂行して卒業したいと思っていました。

私には、鍼灸学校の専門学校の学生さんと共同研究による「毫針電極の電気化学特性」、友人たちはそれぞれ温灸の熱伝導についてや、自律神経の機能についてのテーマを与えられました。

ちなみに毫針とは鍼灸治療に用いる針の種類の1つです。

講義の中でも金属の電気化学的な界面活性について学んでおり、その応用としての実験でした。

人体モデルとして生理食塩水を用い、そこに金属(針)が入ることで、イオン移動による微弱な電流が流れることを研究するというテーマです

私だけ共同研究者の方のスケジュール都合で、研究を9月までに終える必要があったので、就職活動が気になるものの早めに実験を進めることになりました。

私の共同研究者はKさんという3歳くらい年上の男性でした。

すでに当時日本で唯一の鍼灸大学を卒業して資格はお持ちの上、さらなる向学のために、鍼灸学校の教員養成課程に進学されていました。鍼灸が何かも知らず、何かお年寄りっぽいイメージを持っていたので、そんなにお若いのに鍼灸師の資格を取るなんて、非常に珍しい方だと思っていました。

謙虚で物腰もやわらか、一切のお肉類は食べず、色白で赤ちゃんのようなツルツル肌をされていて、同世代男性といえばガツガツ食べて飲む男子大学生しか知らなかった私は、初めてお会いするタイプの方でした。

学食でもギラギラしたものを食べ吹き出物を作る私に、油や肉を控え、野菜を多くとると肌が綺麗になりますよと教えてくださったのですが、当時の私は、全く聞く耳を持たず、今思えばとてももったいないことをしました。

一夏の間、連日研究室で、Kさんと、様々な径の針を生理食塩水に1mmずつ沈め、流れる電流を計測し続けました。

結果、皮膚表面と体内は電位差があるため、針という金属が刺入されることにより、ショートし、金属表面のイオン移動による微弱な電流、ファラデー電流が流れることがわかりました。

さらに医師を目指したいと話されていたKさんは、その後医学部に入り直し、現在は総合診療医をされています。

ちなみに、研究室仲間の1人も卒後、社会人を経て、猛勉強の末、医学部に編入、現在は皮膚科医をしています。

医師になるための努力がどれだけ大変なことか、身近で知っているだけに、鍼灸師になった現在も、常に勉強しなくては責任をもって人の健康を扱えないと思う日々です。


さて普通は秋に山場を迎える卒業研究を夏にほぼ終え、遅れていた就職活動を再開しました。

難航しましたが、ランドスケープデザインをする造園コンサルタント会社に就職が決まり、元々希望していた分野に進むことになりました。

先生の熱心な指導を裏切る劣等生ぶりで何度も迷惑をおかけしながらも、私も何とか無事に卒業しました。

「研究は、翌年度の全日本鍼灸学会に発表したらどうか」
「君も鍼灸師の資格をとりたまえ」とのお勧めがあったのですが、
「先生、まさか!」と笑って卒業しました。

これからは社会人1年生として勤めるだけで精一杯で、学会発表をする余裕はないという自覚がありました。

そして鍼灸なんて卒業のためにたまたまた出会ったテーマなだけで、今後の私の人生には無関係と思っていたのです。

まさか自分が鍼灸師になるとは…夢にも思いませんでした。

続きます…。
野口鍼灸 Noguchi Harikyu 
 
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